この前、無名の俳優だったジョン・ウェインをスターにしたジョン・フォード監督の映画『駅馬車』を見ました。
インディアン追撃から逃れるシーンは圧巻の一言でした。
しかし、ここでひとつ気になる事があります。
インディアンの一人が馬車を引く馬に飛び乗り、撃たれた後に
地面に落下するシーンですが、あれは流石に死ぬんじゃないんでしょうか?
他にも落馬するシーンなどを見ると、運が良くても大怪我は免れない様なスタントシーンも多いと思います。
しかも、エンディングクレジットを見てみると主演を演じた俳優十数名程度の名前が出るだけで
脇役の人達の名前は何処にも載っていませんでした。
もしかして、あの映画に出演してインディアンを演じていた人達は、本物のインディアンだったのでしょうか?
もし、そうだったとしたら当時、製作側からインディアンは人間扱いすらされていなかったのですか?
あの作風は、インディアンの人達に対する差別としては酷すぎるの頂けません。
おそらく、驚かれたスタントを演じたのは、ハリウッドでも有名なスタントマン、ヤキマ・カヌートです。
ネイティブ・アメリカンではありません。
後に、「ベン・ハー」の戦車シーンでチャールトン・ヘストンのスタンドインとしてこちらもすばらしいスタントシーンを演じてます。
こちらに、詳しく紹介されてました。
http://wayne1907.hp.infoseek.co.jp/yakima.htm
当時(もう既に飽きられていた題材ではありましたが)西部劇は、勧善懲悪が基本で、その悪といえばネイティブアメリカン(当時で言うところのインディアン)でありました。インディアンと言う呼称もみなおされるような昨今では、たしかに差別的であるかもしれませんが、この程度の脚本は当時としては基本であったわけです。
さて、「駅馬車」には、ロケ地となったモニュメントバレーに居留地を構えるナヴァホ・インディアン(あえてこう表現します)がキャストやスタッフに多く起用されています。
ただし、それは過酷な労働条件の下で酷使されていたわけではなく、当時のインディアンの多くがそうであったようにナヴァホ族も生活に困窮しており、それを見かねたフォードが彼らを起用することで実質的な援助を行ったわけです。賃金もハリウッドの規定料金がきちんと支払われています。
余談になりますが、フォードは、何かと口をはさんでくる製作サイドのうるさいお偉方から逃げる意味もあっって、あえて辺境の地であったモニュメントバレーをロケ地に選ぶのですが、その場所がいたく気に入り、以後何度も利用しています。そしてそのたびにエキストラやスタッフにナヴァホを雇っています。
一方、件のクライマックスアクションシーンはモニュメントバレーでなく、カリフォルニアのロケ地を使用、ウェインの知り合いであったベテランスタントマンの指導の下、何度もテストを重ね、危険なアクションシーンもきちんとスタントマンを起用して撮影を行っています。
お尋ねの「インディアンの一人が馬車を引く馬に飛び乗り、撃たれた後に地面に落下する(ついでに言えばその上を馬車が通り過ぎる)シーン」も、彼が実際に皆の前で演じて見せたアクションシーンです。
ですから、エキストラにインディアンの起用はありましたが、スタントはきちんとスタントマンを起用しており、インディアンが人間扱いされていなかったと言うようなことはなかったわけです。
今から70年前の映画に対して「政治的な正さ」をお求めになる?
そりゃ、幾らなんでも強引過ぎませんかね。多分、「名画を侮辱するな」とかいう
釣り回答を期待してるんでしょうが。
現実問題ね、ちゃんと統率された馬ってのは人間とか踏まないもんです。
競馬での落馬騒動で馬に踏まれて死んだという騒ぎが少ないのもそのため。
人間だって、どんなに焦って走ってても目の前に犬や猫がいたら踏まないで
やり過ごすでしょう? それは踏んだら嫌な気持ちになるとか以前に、体が
そういう風に動くものなんです。
「駅馬車」で実際に事故があったかどうかは、私は寡聞にして知りません。
しかし、「政治的に正しくない」とはいえ、名画中の名画。
ネイティブ・アメリカンの人々が関わったかどうか(多分、関わっていないと
思います)そういった資料は現地へ行って調べれば出てくると思います。
そういったこともしないで、単なる憶測で「差別はいけません」とか書くのは
いかがなものかと。
ちなみにクレジットが無いのは当時クレジットは義務化されてないからであって
今、海外の映画に嫌になるぐらいクレジットが出てくるのは、少しでも仕事として
関わって、労働組合に参加してる人はクレジットすること、という決まりがあるから。
別にネイティブ・アメリカンを差別する意図は無いので勘違いしないように。
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